そもそも工業技術の分野で精度とはどういう意味を持つのでしょうか。例えば近年普及してきているデジタルノギスを思い描いてみて下さい。従来型のノギスに小型の液晶パネルが付随し、測定値がそこに表示されるというものです。ではそこに示される数値は、どの程度信頼できるでしょうか。例えば工場出荷直後であればその性能が保持されていたとしても、日々作業現場で酷使されているうちに精度が狂ってくるということは大いにあり得ます。そこで主にメーカーなどの担当部門にノギスを送り、そこで標準サンプルを測定して正しい値が表示されているか、ということを診断し、必要があれば調整し、その記録データと証明書を付随して返送されます。このように測定具は、その信頼性を担保するために所定の手続きでその精度を検証する必要性があります。これが校正です。この稿では熱電対という測定器の場合を考えてみます。

過酷な温度環境の現場で用いられる測定具とは。

工業技術においては、精密な温度測定が求められます。たとえば水に関して氷点は0℃で沸点は99.974℃です。小学校の理科では沸点は100℃と学びますが、精密さを要求される工業技術の分野は小数点以下第三位までの精度を求められます。しかしこれらの範囲でならば技術的なハードルは低いものの、窒素の沸点がマイナス195.798℃であることを測定するためにはかなり高度な技術を要します。反対に極度に高温のデータを採取するにも同様の問題が生じます。このような場面では、熱電対と呼ばれる技術を用いた計測器が用いられます。これは異なる素材の金属線を繋ぎ合わせて回路を作り、ふたつの接点に異なる温度を加えると電圧が発生するというメカニズムを持ちます。この原理が熱電対であり、この原理を利用した熱測定器が知られています。この原理はシンプルであるうえ極度の低温から高温にまで耐性があるため、信頼性が高い機器です。

校正作業はなぜ必要か、どのように行われるか。

工業品製造の現場で、300℃の加熱加工を1時間行なうという工程があったとします。この場合は実際に、加工炉が300℃の雰囲気を確実に保っているかどうかが重要です。機械操作パネルの温度設定のメモリを300℃に合わせたからと言って、加工炉が実際に300℃になっているのかどうかは証明できません。そこで熱電対を加工炉に製品同様1時間投入し、実際にその温度が正確に示されているかどうかをテストすることで、その工程の加工精度を保証します。しかし測定器具がいかに精密なものだったとしても、過酷な環境で酷使されればその性能もいずれ低下します。そのため期間を定めて定期的にその精度の確からしさをチェックする必要がでてきます。そこで校正が必要となります。その方法にはふたつあり、正確な温度値を温度定点で与えて行う定点法と、任意に定めた恒温槽温度を標準機で計測し、同時に計測した被校正測定器との誤差を求めて行なう比較があります。いずれも測定器メーカーで行なわれます。

特定校正は、計量法校正事業者登録制度(JCSS:Japan Calibration Service System)の登録を受けようとする事業者及び登録を受けた事業者の標準器(特定二次標準器)の校正を行います。 家庭、工場の電力計は検定を受ける必要があり、電気機器メーカーがターゲット層であり、電気の適正な取引確保を独立機関として保証しています。 熱電対の校正についてはこちら