2種類の金属線を繋いで閉じた回路を作り、各々の接点を異なる温度に保つと、回路に電流が流れます。これをゼーベック効果と呼んでいます。この電流を検出して、温度を計測する装置が熱電対です。熱電対は耐久力が高く、高温から低温まで安定して測定することができます。過酷な条件での使用にも耐え、長寿命で誤差が少ないので、工業用として幅広く採用されています。金属の素材としては、ニッケルとクロムの合金や鉄・銅・白金などが用いられます。素材の組み合わせによって計測できる温度が異なり、最低温度は-269℃、最高温度は3000℃に達します。ただし耐久力があるとは言え、センサーに狂いが生じる可能性があるので、正確に測定するためには、原則として半年に1回の校正が求められます。
測定器の誤差を修正する定点法と比較法
熱電対の校正とは、正しい温度と測定器が示す温度を比較して、誤差を修正する作業を言います。その方法として、大きく分けると定点法と比較法があります。定点法は測定器に決まった温度を与え、正しく表示されているか確かめる方法です。一般には氷水の0℃や、沸騰している水の100℃がよく用いられます。低温を計るには液体窒素や液体酸素が、高温を計るには金属の沸点が使用されることもあります。これらは常に同じ温度を再現できるという利点があります。これに対して比較法は、より正確な測定器(標準温度計)と比較して誤差を求める方法です。定点法のように特定の温度を作る必要がない点がメリットで、実際には広く用いられています。ただし比較の対象になる測定器にも、誤差がある可能性は十分に考えられます。
トレーサビリティで信頼性を確保
比較法で校正する場合には、使用する標準温度計のトレーサビリティに注意する必要があります。トレーサビリティとは、校正に用いた測定器を遡っていけば、最終的には国家標準に結びつくことの証明です。測定の信頼性を確保するためには、トレーサビリティ証明書や体系図が重要な役割を果たします。品質管理の目安として、取引先からトレーサビリティ証明書の提出を求められることもあります。熱電対は材料となる金属の性質によっても異なりますが、使用限界温度に近づくほど寿命が短くなり、測定誤差も生じやすくなります。また使用環境中のガスによって腐食することも考えられます。極度の高温や低温下で使用している場合は、通常よりも早めに点検を行ない、メンテナンスに気を配ることが大切です。